第2編 いろんなビジネス
第二編 商行為
第8章 運ぶ仕事
第八章 運送営業

第2編 第9章 預かって保管する仕事
第2編 第7章 運送取扱業者の仕事
第1節 この章全体にいえること第一節 総則
運送業者とは
- 第569条
- 商法における以下の用語の意味は次の通りです。
- 一
- 運送業者とは、陸上運送、海上運送、航空運送により人や荷物を運ぶ仕事を請け負う業者を指します。
- 二
- 陸上運送とは、鉄道やクルマにより人や荷物の運送を行うことを指します。
- 三
- 海上運送とは、船舶により人や荷物の運送を行うことを指します。
- 四
- 航空運送とは、航空機により人や荷物の運送を行うことを指します。
原文
100
第二節 物品運送
物を送り届けてください
- 第570条
- 預かった品物を指定された相手の所まで運び届けることで、品物を預けた人から運送費をもらう契約のことを《物品運送契約》といいます。
原文
101
送り状について
- 第571条
-
荷物を預けたら、必ず送り状を記入して運送業者に渡してください。
送り状には次の内容を記入してください。 - 一
- 何を送るのか。
- 二
- 荷物の大きさかその重量、荷物の個数、荷物の識別記号。
- 三
- 荷造りや梱包の状態。
- 四
- 荷物を預けた人の名前や名称、荷物の届け先の名前と名称。
- 五
- どこから荷物を預けて、どこまで送り届けるのか。
- 2
-
送り状は必ずしも手書きの書面である必要はありません。
業者が対応可能であれば、情報技術を用いた方法で送り状の機能を代行してもかまいません。
原文
102
荷物に危険物が入っていたら
- 第572条
-
預ける荷物が、引火性や爆発性のある危険物が含まれる場合は、荷物を引き渡す前に運送業者に伝える必要があります。
伝える必要がある事項は、次の通りです。- 危険物の品名
- 危険物の性質
- 安全に運ぶために必要な情報
原文
103
運送費の支払い
- 第573条
- 運送費は、預けた荷物が指定した届け先に届いた時点で支払ってください。
- 2
-
たとえ不可抗力であっても、預かった荷物を壊されたり、荷物を紛失されたら、運送費を支払う必要はありません。
もし先に運送費を支払っていたら、返金してもらうことができます。 - 3
- 荷物を預けた人の側に問題がある場合はもちろん、運ぶことに無理が荷物だったり、欠陥が隠れていたせいで荷物が壊れたり失くなった場合は、普通に運送費を支払う必要があります。
原文
104
ちゃんと運送費を支払わないと
- 第574条
-
支払うべき運送費を支払わないと業者は荷物を渡してくれません。
運送に関わる経費や業者が建て替えている費用についても、支払わないと業者は荷物を渡してくれません。
運送業者には渡さなかった荷物をそのまま留め置く権利が認められます。
代金を支払わない客などから預かっている荷物を客に引き渡さずに留め置くことが認められる権利のことを《留置権》といいます。
原文
105
壊れたり、遅れたときの責任問題
- 第575条
-
運送業者には、荷物を預かったときから届けるときまで荷物に対する責任があります。
その責任とは、荷物を失くしたり壊したりしないことはもちろん、荷物に損傷を与える原因となることに気をつけること、荷物を約束した日時に遅れないようにすることで、そのために依頼者に損害を与えてしまったら損害を賠償しなければなりません。
とはいえ、業者は責任をもって注意を怠らずに荷物を扱っていたことの裏付けがあれば、損害賠償には及びません。
原文
106
損害賠償となったら
- 第576条
-
壊したり、失くしてしまった預かり品の損害賠償をする場合、届け先での市場価格を参考にして金額を決めてください。
市場価格がはっきりしない場合は、できるだけそれに近いものを参考にして金額を決めてください。 - 2
- 運送費を返金していたら、その分の金額は損賠賠償の金額から差し引くことが認められます。
- 3
-
運送業者がわざと荷物を壊したり亡くしていた場合、損害賠償額は市場価格よりも高額になることが認められます。
わざとではなくても、運送業者に重大な過失があった場合も、損害賠償額は市場価格よりも高額になることが認められます。
原文
107
高価な荷物は事前に通知を
- 第577条
-
預けた品物の中に現金や有価証券、その他の高額な品物が入っていても、ちゃんといくら位の物なのかを運送業者に伝えていなければ、品物が失くなっていたり、破損していても損害賠償を請求することはできません。
現金や高額な品物などの到着が遅れた場合も損害賠償を請求することはできません。 - 2
- 次の場合は、現金や高額な品物に関する損害賠償を請求をすることが認められます。
- 一
- 運送契約を結ぶ時点で、品物に現金や高額な品物が含まれていることをきちんと伝えていた場合。
- 二
- 運送業者が現金や高額な品物をわざと失くした場合や重大な過失によって失くしたり壊した場合。
原文
108
陸、海、空、どの段階でトラブルが起きても
- 第578条難文
-
陸上運送、海上運送、航空運送の内、二つ以上の方法を組み合わせて一括で運送契約を結ぶことを《複合運送》といい、海外との運送を想定したケースとなります。
複合運送の最中に紛失や破損が起きると、陸上、海上、航空のどの段階でトラブルが起きようが、品物を預けた側としては商法や関係する条約にもとづいて責任を追求することが認められます。
業者側では、紛失や破損を実際に引き起こした段階の業者がトラブルの責任を引き受ける必要があります。 - 2
- 陸上運送の場合でも、貨物列車とトラックを組み合わせて運送契約を結ぶ場合には、複合運送と同じように紛失や破損の責任を負うことになります。
原文
109
リレー方式の場合の責任
- 第579条難文
- 陸上運送業者がリレー方式で荷物を運ぶ際に、前の業者が無事に荷物を届けたら、その分の代金の請求権は後の業者が引き継ぐ責任を負うことになります。
- 2難文
- 陸上運送業者がリレー方式で荷物を運ぶ際に、後の業者が前の業者のトラブルの責任を追った場合、前の運送業者の代金を請求する権利は後の業者に移ることになります。
- 3
- リレー方式で荷物を運ぶ契約の場合、契約を請け負った運送業者はもちろん、区間ごとに荷物を運ぶ各運送業者は、荷物の紛失や破損に関する責任を連帯して負うことになります。
- 4
-
海上運送でもリレー方式で荷物を運ぶことになったら、上記のような責任は海上運送の業者も陸上運送の場合と同じように負うことになります。
航空運送でもリレー方式で荷物を運ぶことになったら、上記のような責任は航空運送の業者も陸上運送の場合と同じように負うことになります。
原文
110
荷物のキャンセル
- 第580条
-
荷物を預けた後でも、キャンセルや届け先の変更は可能です。
ただしキャンセルや変更をするまでにかかった経費や関連費用についての請求には応じてください。
原文
111
ちゃんとやらなかった場合の責任
- 第581条
-
荷物がちゃんと届いたら、宛先の人にも荷物が自分を受け取る権利がが生じます。
紛失により全く荷物が届かなかったら、宛先の人にも運送業者に対する損害賠償を受ける権利が生じます。 - 2
-
宛先の人が荷物を受け取ったら、荷物を預けた人には運送をキャンセルしたり、品物を受け取る権利は消滅します。
宛先の人が荷物が紛失したことに対する損害賠償を受けたら、荷物を預けた人には損害賠償を受ける権利は消滅します。 - 3
- 荷物を受け取ったら、その人にも運送費を支払う義務が生じます。
原文
112
どうしても届け先がわからないときは
- 第582条
- どうしても届け先がわからないときは、供託をしてください。
- 2
- 供託している品物について荷物を預けた人に対応の指示を求めたにもかかわらず、回答の期限が過ぎても指示が出されない場合は、その荷物を競売にかけることが認められます。
- 3
- 時間がかかると品物が傷んでしまうおそれがある場合、荷物を預けた人に指示を求めるまでもなく、届け先不明の品物を競売にかけることが認められます。
- 4
-
届け先不明の品物を競売にかけて得られたお金は供託してください。
供託するお金から運送代金を差し引いてもかまいません。 - 5
- 届け先がわからないために供託したり、競売にかけるときは、ムダに遅れることなく荷物を預けた人に通知をしてください。
原文
113
荷物を受け取ってもらないときは
- 第583条
- 期限を伝えた上で、宛先の人がどうしてもその期限内に荷物を受け取ってくれなかったり、その期限内に受け取ることができなかった場合も、荷物を供託したり、競売にかけることが認められます。
原文
114
問題のある品物が届いてもクレームをつけないと
- 第584条
-
届いた品物が壊れていたり不足していたら、受け取った人はクレーム対象にしてください。
その場で品物に問題があることに気づかなくても、受け取ってから2週間以内であればクレーム対象にすることができます。
それまでにクレームの対応をしないと、運送業者には賠償をする責任が無くなることになります。 - 2
- 品物が壊れていたり不足していることを運送業者がわかっていた場合、クレームがなくても運送業者には賠償の責任があります。
- 3難文
- 外部委託による下請けの運送業者によって運ばれた品物に問題があるケースで、運送業者が受け渡しの日から2週間以内にクレームを受けていたら、運送業者から外部委託業者への損害賠償の期間はクレームを受けた日からさらに2週間以内に裁判上の手続きを行ってください。
原文
115
品物が届かなくてもクレームをつけないと
- 第585条
-
品物が届かなかったら、お届け予定日から一年以内にクレーム対象として裁判上の手続きを行ってください。
一部の品物だけしか届かなかったら、届いた日から1年以内にクレーム対象として裁判上の手続きを行ってください。
それまでに訴えでないと、運送業者には賠償をする責任が無くなることになります。 - 2
- 荷物が届かないせいで損害が発生した場合に運送業者が合意すれば、お届け予定日から1年以内という期限を延長することが認められます。
- 3難文
-
外部委託による下請けの運送業者によって運ばれた品物が届かなかったケースで、クレームに対して運送業者が損害賠償に応じていたら、運送業者から外部委託業者への損害賠償はお届け予定日から1年3ヶ月以内に裁判上の手続きを行ってください。
クレームに対して運送業者が裁判で訴えられていた場合も、お届予定日から1年3ヶ月以内となります。
原文
116
運送代金を1年間請求しないと
- 第586条
- せっかく荷物を届けても、お届け日から1年以内に代金を請求しないと、時効となって請求できなくなってしまいます。
原文
117
運送業者が不法行為をしていたら
- 第587条
-
運送業者の不法行為により、壊されたり、欠けてしまった品の損害賠償の場合、届け先での市場価格を参考にして金額を決め、市場価格がはっきりしない場合はできるだけそれに近いものを参考にして金額を決めますが、損害賠償額は市場価格よりも高額になることが認められます。
運送費を返金していたら、その分の金額は損賠賠償の金額から差し引くことが認められます。
高額な品物だと伝えていなければその分の損害賠償の請求が認められませんが、不法行為が原因であれば損害賠償請求は認められます。
不法行為が原因であっても、損害賠償には2週間以内にクレームの対象にする必要がありますが、荷物が壊れていたり失くなっていることを運送業者がわかっている場合は、クレームがなくても運送業者には賠償の責任があります。
不法行為が原因で品物が届かなかったら、お届け予定日から1年以内にクレーム対象として裁判上の手続きを行ってください。
荷物が届かないせいで損害が発生した場合に運送業者が合意すれば、お届け予定日から1年以内という期限を延長することが認められます。
窓口の業者が荷物の引き受けを断っていたにも関わらず、依頼者側が無理をして荷物を預けて、運送業者が不法行為を起こしてトラブルとなった場合、運送業者が責任を負い、窓口の業者には責任が及びません。
原文
118
運送業者の従業員の不法行為の責任
- 第588条難文
- 運送業者の従業員の不法行為が原因の荷物トラブルに関する損害賠償の責任を負わなくて済んだ場合、その分の不法行為を起こした従業員の責任も負わなくて済むことになります。
- 2
- たとえ運送業者が損害賠償を負わなくて済んだとしても、従業員がわざと不法行為をしていたり、重大な過失によって不法行為をしてしまった場合は、責任を負わなくてすむことにはなりません。
原文
119
第三節 旅客運送
旅客運送契約が成立するには
- 第589条
- 交通機関はお客様を目的地まで運ぶことを約束し、お客が料金を支払うことを約束すると、旅客運送契約が成立します。
原文
120
お客様を運ぶサービスをする責任
- 第590条
- 旅客業者たるもの、お客様を運ぶサービスをする以上、必要な注意を怠っていなかったことが証明できない限り、運行中のトラブルの損害賠償をする責任があります。
原文
121
命の保証
- 第591条
-
旅客業者たるもの、お客様を運ぶサービスをする以上、「怪我しても知らない」とか、「命の保証はない」などという特約は認められません。
ただし、「到着が遅れても保証はできない」という内容であれば特約として認められます。 - 2
- 次の場合、怪我や命の保証ができないことはやむを得ない場合として認められます。
- 一
- 大規模な火災や震災、その他の災害が発生したり、発生する恐れがある中で出発する場合。
- 二
- 客の体質や持病により、振動などの乗り物の影響を受けて体調が悪化したり、生命に危険を及ぼす場合。
原文
122
お客様から預かった荷物には
- 第592条
- お客様から預かった手荷物は、手荷物料を受け取っていなくても、お客様と同じように目的地まで運び届ける責任があります。
- 2
- 旅客業者の従業員たるもの、お客様から預かった手荷物は、荷物を専門で運ぶ運送業者の従業員と同じ責任を負っています。
- 3
-
目的地に届けてから1週間経ってもお客様が手荷物を引き取ってくれない場合、その手荷物を供託するか、それなりの期間を決めて引き取りに来るように呼びかけを行った上で競売にかけることが認められます。
供託したり、競売にかえることになったら、そのことを取り急ぎお客様にお伝えしてください。 - 4
- 手荷物の中身が、傷んでしまって物だったり、鮮度が落ちてしまうと競売しても値段が下がってしまう物だったら、引き取りに来るように呼びかけをするまでもなく競売にかけてもかまいません。
- 5
-
引き取ってもらえない手荷物を競売にかけて得られたお金は供託してください。
お客様が料金を支払っていなかったらその分は競売で得られたお金を充ててもかまいません。 - 6
- お客様の連絡先がわからない場合は、供託や競売をすることになっても引取の呼びかけをする必要はありません。
原文
123
お客様が自分で持っている荷物には
- 第593条
-
お客様から預かっていない手荷物には、お客様が責任を負うことになります。
荷物が失くなったり、壊れてしまっても損害賠償の責任を負う必要はありません。
わざと失くしたり、壊してしまった場合はもちろん、過失があった場合には責任から逃れられるわけではありません。 - 2
-
お客様から預かった手荷物を壊したり、失くして損害賠償をする場合、お客様の目的地での市場価格を参考にして金額を決めてください。
わざと手荷物を壊したり亡くしていた場合や、重大な過失があった場合、損害賠償額は市場価格よりも高額になることが認められます。
お客様に引き渡した手荷物が壊れていたり不足していたら、目的地に到着してから2週間以内にクレーム対象にしてください。
目的地に到着しても手荷物を引き渡してもらえなかったら、目的地に到着した日から1年以内にクレーム対象として裁判上の手続きを行ってください。
手荷物が届かないせいで損害が発生した場合に旅客業者が合意すれば、目的地に到着した日から1年以内という期限を延長することが認められます。
不法行為による手荷物のトラブルは一般の荷物の場合と同じように扱われます。
旅客業者の不法行為に対して損害賠償の責任を負わなくて済んだ場合、その分の不法行為を起こした従業員の責任も負わなくて済むことになります。
原文
124
旅客代金を請求しないと
- 第594条
- せっかくお客様を無事に目的地までお連れしても、その日から1年以内に代金を請求しないと、時効となって請求できなくなってしまいます。
原文
125
第2編 第9章 預かって保管する仕事
第2編 第7章 運送取扱業者の仕事
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